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超省エネを実現する「パッシブハウス」。森住建の建築事例を詳しく解説します
2019.11.13
こんにちは、森住建設計の桐山です。
近年、エコハウスの中でも抜群の快適性能を誇る「パッシブハウス」に注目が集まっています。
自然のエネルギーを使い環境にやさしい、光熱費を抑えられるなど、通常の住宅では得られないメリットは見逃せません。とはいえ、まだパッシブハウスがどんな住宅なのかが広く知られていないのが現状だと思いますので、森住建で一番パッシブハウスに詳しい私が解説させていただきます!
電力や石油を使う製品に頼らず、年中快適に暮らそう
「パッシブハウス」は、もともとドイツのパッシブハウス研究所がつくった建築メソッドのことで、クーラーや暖房器具といった電力や石油を使う製品に極力頼らず、年中快適に暮らせる家を指します。
ではなぜ、パッシブハウス研究所が“パッシブハウス”を提唱したのか。それは、世界のエネルギーの枯渇を懸念しているから。風や太陽光といった自然の力を積極的に利用し、石油や電力をなるべく使わない生活を送ることができれば、エネルギーの枯渇は抑えることができますからね。
設計前に、家を建てる地域の気象データを細かく検証
パッシブハウスを建てるには、まずマイホームを建てたい地域の気象データを抽出します。データは気象庁のサイトから見ることが可能。都道府県と観測地点を選択すれば、過去の気温や湿度、降水量、風速、雲量などのデータが表示されます。そして、これらのデータをもとに最適な設計を考え、建物をつくっていくのです。
では次に、私自身が設計したパッシブハウスの特徴をお話しします。
- 断熱材を多用
断熱材は外気温を中に伝えにくくする役目があり、「夏は涼しく、冬は暖かい」を実現するためには不可欠です。通常よりも倍の厚みを持つ断熱材を吹き付けることで、断熱性能は大きくアップ。これによって、エアコンや暖房の使用量を抑えられます。
- 樹脂サッシの窓を採用
窓のサッシはアルミが一般的。ですが、樹脂のサッシはアルミよりも、断熱や遮熱、機密性にすぐれています。基本的に室内の熱は窓から逃げていくので、樹脂サッシにすると、冬は室温の低下を防ぐことができるんですね。
一方、夏は遮熱効果によって暑い空気が室内に入りにくくなります。実は樹脂サッシはパッシブハウスの発祥地、ドイツにおいてはごく当たり前なんです。
- 計算された窓の配置
気象データをもとに、家を建てる場所の風向きを読み、風が通りやすいような窓の位置を割り出します。なお、東と西側には窓を極力設けません、というのも、東と西側は日差しが特に強く、必要以上に熱を取り入れすぎることになるからです。
ちなみに、各窓の上に庇(ひさし)を取り付ければ、熱を取り入れ過ぎることはありません。なお、庇が長過ぎると、日の低い冬は、光が入らなくなるので、その辺りも計算して庇の長さを考えます。
- すぐれた採光力
吹き抜けをつくって、階上の光を階下に落とせば、暗さに悩むことはありません。また、2階建ての場合、2階の壁の上部に高窓を取り付ければ、さらに採光力もアップ。なお、高窓は開閉式でも構いませんが、大きなフィックス窓(開閉できない固定化された窓)にすると、採光力だけでなく、高い気密性にも期待できます。
細かなことを言えば、ハニカムシェード(ロールスクリーンの一種)をカーテンの代わりに取り付けたり、窓をガス入りにすることで、断熱や保温効果は、さらに高まります。
パッシブハウスは、完全オーダーメイドの家
パッシブハウスに住まわれているお客さまからは、「ほとんどエアコンを使わなくても快適」とのうれしい声をいただきました。狙い通りの設計で喜んでいただけたことは、設計者冥利に尽きますね。
パッシブハウスは完全オーダーメイドの家です。それゆえ、規格化された商品が目立つ大手ハウスメーカーでは、その実現はおそらく困難ではないでしょうか。また、パッシブハウスは設計力もさることながら、設計者がきちんと概念を理解していないとつくることができません。
最後に
森住建では、パッシブハウスの良さをもっと伝えていきたいと思っています。現在、若手設計者や営業担当は勉強会に参加し、知識の習得に励んでいます。また、新築だけでなく、リフォーム部門でもパッシブハウスの実現に向けての動きがあり、準備が着々と進行中。
パッシブハウスという新しいムーブメント、気になる方は、ぜひ一度森住建で話を聞いてみてくださいね。丁寧でわかりやすい解説は、この桐山にお任せください!
PROFILE
桐山善行
設計部・部長